「エージェント」から「メディエイター」へ:「三方よし」の境地

福岡で医師の転職支援を行っている、株式会社メディエイトワークスの山崎です。
最近ではテレビCMなどでも「転職エージェント」という言葉を頻繁に耳にするようになり、一般にも広く認知されてきました。

私がこの業界に足を踏み入れた20数年前、自らの社名に「エージェント」を冠する会社を見たとき、正直に言って「なんて先見の明があるんだ」と感心したのを覚えています。
当時の私にとって、その響きはとてもプロフェッショナルで、求職者である医師の「強力な味方」として戦う姿勢を象徴しているように見え、非常に魅力的に感じられたのです。

しかし、長年この現場で泥臭く交渉を重ね、医師と病院の両者に深く向き合えば向き合うほど、私の心の中にはある「違和感」が膨らんでいきました。


「エージェント」という言葉に感じた、小さなしこり

エージェント(代理人)という役割は、本来、先生の「代わり」となって、病院側と対等に、時には強く渡り合う立場を指します。

しかし、実際の医師紹介の現場に向き合えば向き合うほど、それだけでは語れない難しさを感じるようになりました。
先生のご希望を100%叶えるために、病院側の事情を後回しにして強引に話を進めることが、本当に先生の幸せに繋がるのだろうか、と。

たとえ病院側の状況や現場の空気感を押し切って好条件を勝ち取ったとしても、その先生がいざ勤務を始めたとき、周囲から心から歓迎されるでしょうか。
また、私たちをパートナーとして頼ってくださる病院側との信頼関係を置き去りにして、一方的な主張を通し続けることが、これから先もずっと続く良いご縁作りと言えるでしょうか。

私がこれまで現場で大切にしてきたことは、単なる「条件の代弁」ではありませんでした。
病院側の想いもしっかりと受け止め、先生の願いと重なり合わない部分があれば、双方が笑顔で握手できる「ちょうどいい場所」を粘り強く探っていく。
それは、エージェントという一言ではこぼれ落ちてしまうような、もっと奥が深くて、細やかな心配りが必要な仕事だったのです。

たどり着いたのは「メディエイト(仲介)」という視点

病院側の意向も踏まえて動く自分に気づいたとき、私は「エージェント」という言葉が、今の自分のスタンスには合わないのではないかと自問自答するようになりました。
そこでしっくりきたのが、「メディエイト(仲介)」という視点です。

  • エージェント: 先生の代わりに病院と「戦う」

  • メディエイター: 先生と病院の「架け橋」となり、長く続く関係性を築く

20年前にはあんなに輝いて見えた「エージェント」という言葉。
しかし今、私が大切にしたいのは、一方の利益だけを追い求める「強さ」ではなく、両者の間に立って最適解を導き出す「調整の質」です。


メディエイターが体現する「三方よし」

このメディエイターという役割の中には、日本伝統の商哲学である「三方よし」の精神が宿っていると私は考えています。

  1. 医師よし: 納得のいく条件と、入職後も歓迎される環境が手に入る。

  2. 病院よし: 自院の理念や状況を理解した、長く活躍してくれる医師を迎えられる。

  3. 世間よし: 良好なマッチングにより地域医療が安定し、患者さんに良質な医療が提供される。

一方が勝って一方が負ける交渉(エージェントの極致)ではなく、全員が「これで良かった」と思える調和。
これこそが、メディエイターが目指すべき究極の形です。


新たなスタンダードを目指して

医師の転職は、単なる労働契約の締結ではありません。
それは、一人のプロフェッショナルが新しい医療現場に溶け込み、そこにある命と向き合うための「マッチング」です。

そのためには、どちらか一方の肩を持つのではなく、医師と病院、双方が納得感を持って握手できる環境を整える存在が不可欠です。

私は、この医師の転職業界において「メディエイター」という言葉が認知されるようにしたい。

それが、結果として先生方のキャリアを守り、ひいては福岡、そして日本の地域医療の安定にも繋がると信じているからです。