医師人材紹介のリアル:理想と現実のギャップ

こんにちは。医師専門の人材紹介会社を経営しているメディエイトワークスの山崎です。

「お医者さんの人材紹介」と聞くと、華やかでニッチで、安定して稼げそう…そんなイメージを持たれることもあります。確かに、やりがいも大きく、社会的な価値も実感できる仕事です。

しかし、実際の現場は理想と現実のギャップに満ちているのですが、今日はそんな私の「悩み」を、少しだけ綴らせてください。

1. 医師の心を動かす難しさ

医師の皆さんは非常に慎重です。紹介のタイミングやキャリアの提案には、「信頼」と「説得力」が不可欠と考えておりますが、信頼を得るには時間がかかり、相手の本音を引き出すには技術が要ります。

紹介会社への登録はしてくれても、なかなか動いてくれない。そのもどかしさと、焦り。それでも、無理に転職を勧めることは絶対にできません。

ある時、こんなことがありました。

「情報収集のため」と登録されたベテランの外科医の先生がいらっしゃいました。何度か面談を重ね、雑談の中から、実は現在の職場で新しい手術手技の導入に課題を感じていらっしゃるという本音が見えてきたんです。すぐに転職を勧めるのではなく、その先生が興味を持ちそうな「最新医療機器を積極的に導入している病院」の情報を定期的に送ったり、学会の情報をお伝えしたりと、地道なコミュニケーションを続けました。信頼関係が深まったある日、先生の方から「実は、もう少し詳しく話を聞きたい病院があるんだけど…」と切り出してくださり、結果的に理想的な転職を叶えられました。医師の先生方の決断は、本当に時間をかけて、慎重に行われるものだと改めて実感した出来事です。


2. 医療機関との板挟み

一方で、医療機関側にも切実なニーズがあります。「今すぐにでも来てほしい」「手術を積極的にしていただける医師を招聘したい」「〇〇の資格を持った方に来てほしい」等。しかし、医師の意向と必ずしもマッチするわけではありません。双方の要望の間で調整を図るのが私たちの役目ですが、時には「どちらの味方なのか」と問われることもあります。

この「中立であること」の難しさ。私の永遠の悩みかもしれません。

以前、こんなケースがありました。

地方の病院から「すぐにでも内科医がほしい」と強い要望があったのですが、ご提案できる医師の先生方は、皆さん「給与条件が良い病院」や「都市部での勤務」を希望されていました。病院からは「何とか説得してほしい」と何度も連絡があり、医師の先生からは「なぜ自分の希望が伝わらないのか」というお叱りを受けることも。どちらの立場も理解できるからこそ、本当に心が痛む瞬間です。最終的には、病院側が「週末に帰省ができる働き方で調整します」と条件を緩和し、医師の先生も「一定期間なら地方でも」と譲歩してくださり、双方にとってベストではないものの、次につながる形でのマッチングが実現しました。この時の調整は、まさに綱渡りでしたね。

3.おわりに

悩みは尽きません。でも、どれもこの仕事を真剣にやっているからこそ感じるものだと思っています。

医師の人生に関わり、医療機関の未来を支える。

決して楽な仕事ではありませんが、一つひとつのマッチングが生み出す「ありがとう」が、また明日への原動力になります。

これからも、悩みながらでも、正直に、真面目に。医療業界の一助になれるよう、精進してまいります。